Adventures in Ville

生まれも育ちも奈良県民なワタシが、東京という大都会のど真ん中でいろいろ出くわす冒険記です。

カサンドラは人のウチに行ってはいけない

そうだった。忘れてた。

 

我が家が特別だということを。

 

先日、保育園の友達のお宅をひょんな事から流れで家族揃って訪問してしまった。

 

車通りの少ない閑静な住宅街に立ち並ぶ素敵な2階建てのお家。

 

リビングに上がると綺麗に片付いていて、突然訪問してこのレベル!?というくらい、すっきり片付いていた。

 

帰ってきたら、ジャンパーはここに入れる、おもちゃはここにしまう、洗面所に余計なモノを置かない、と片付けのルールが整っていて、全てが理想だった。

 

家具も揃っていて、ごちゃごちゃしていないし、おもちゃは決まったところからはみ出ることもなく、くつろぎのスペースが確保されていた。

 

清潔感あふれる洗面所で手を洗っていたら、後ろでアスペ疑惑のオット氏は、

 

「キレイのアイディア盗んでいかねば」

 

みたいなことを言うので、すかさず、

 

「いやいや、ウチには無理ですから」

 

と呟くと、ハテナが飛んでいた。

 

…なんでウチが片付かないか、真剣にわかっていないらしい。ヘタすれば、私のせいだとすら思っている様子。

 

私のせい…?半分当たってなくもない。

 

結婚当初、取り急ぎで住み始めた1DK。ギリギリ40平米あるかないかの間取りで、収納はかつて押し入れだったっぽいスペースをクローゼット化した奥行き深すぎるスペースのみ。

 

最初はいろいろ収納アイディアを考えて、あれを買ってみたら片付くかな、これをこうしてみようかな、とトライしようにも、なんだかんだモノがいる=お金がかかる。

 

お金をかけることに極端に口うるさいオット氏にとやかく言われない方法を捻り出し、ひとまずダンボールに木目シールを貼って箱っぽく見せたものを作って、見せる棚にごちゃっと置かれた服を入れて隠してみる。

 

新婚当初はそれでなんとかなったかもだけれど、丸6年も経つと、子どもの服やおもちゃに加え、オット氏の6年間触れられる事もないけど捨てるとキレられる服やバッグ、その他雑多なアイテムがあふれている。

 

…あれ、6年前、当座のつもりで作ったダンボール箱収納で一生を終えなあかんのかしら…

 

でも、経済的にも孤独なカサンドラは、家賃と車以外の生活の全てが自分の働きにかかっているので、ひとり親家計で日々過ごすと、あれやこれや買う事に不安を覚える&買った後にとやかく言われるのがめんどくさくて、とりあえずその日ぐらしを選んでしまうわけで。

 

そのうち、「ここをもっとこうしたい!」の先には、「でも私、お金ないしな」→「買った事でいろいろ言われたくないしな」のサイクルで生きていると、なにかを改善したいとか、Quality of Lifeを向上させたいという欲求の芽が摘まれる思考になるようで。

 

時々、第三者が「こうしたらいいのに!なんで思いつかんの!?」と言われて初めて、おぉその手があったか、と反応して驚かれる。

 

これぞ調教というものなのかもしれない。

 

結婚して2年くらいは、良かれと思ってものを片付けたり捨てたりしたことで、どこになにがあるかわからないとか、大事なものを捨てられた(→大事とは思えん変な銀色目出し帽とかいつ使うねん、捕まるわ)とかってキレて無視されるのが怖かった。あの頃はまさしくカサンドラ症候群だったんだな。

 

今や、こっそり捨てたろかいなとチャンスを狙ってるし、ちょいちょい欲しいものも買っては隠して使ったりしてる。

 

そんなワタシの目の前に広がるお友だちのお家には、「またこんなモノ買っただろ」とか「無駄遣いしやがって」と言われることのない自由が羽ばたいているような空間だった。

 

高級品に囲まれているわけでもなく、いわゆる一般的なリビングルームなんだろうけど、くつろぎと安心感が漂っていた。

 

ムスコが自分は買ってもらう事のなさそうなレンジャー系のおもちゃ達に目をキラキラさせて、水を得たウオのように遊んでいた。

 

毎月のように家族で出かけている思い出が綴られた、幸せそうなアルバムを何冊も見せてもらいながら、いいね、すごいね、と精一杯の笑顔と気の利いたコメントでレスポンスしていたけど、ページをめくるたびに、ワタシの心はシャープなナイフで切り刻まれていた。

 

この勢いだと、ご飯までズルズルいきそうだったので、やっとの思いで帰宅を切り出し、慌てて帰ってきた。

 

…と途端に、私の古いiPadでレンジャー系のおもちゃを調べるムスコ。

 

あ!と言ってはワタシに見せて、

 

「ねぇねぇ、これ、…さん、はち、なな、なな、ぜろ…?えん。たかい?これ、たかくてかえない??」

 

ときく子ども。

 

…この子もワタシと同じ苦しみを今まさに味わっているんだな…

 

値段じゃないのだよ。

まぁ、多少は値段もあるけどな。

 

時々あまりにも不憫なので、ばぁばがレンジャー系のおもちゃを買ってあげると、

 

「かくしとくね!」

 

と当たり前のように寝る前に隠すムスコ。

 

彼はどんな大人に育つのだろう。

 

いろいろ申し訳なくなった。

 

もちろん、一応、足るを知る大切さはわかってる。屋根のあるお家の暖かい布団で眠れることは感謝してる。

 

でも、ほんとにこのままでいいのかな。

 

と、カサンドラの自問自答は続く。